第10章 東京・京都姉妹校交流会
「真希先輩!野薔薇ちゃん!」
電話で言っていた通り、真希と野薔薇は川が湖に流れ込む地点にいた。
なずなが見つけやすいよう、森から川岸に出ていてくれたらしい。
「さっき下りた帳でおそらく本部と分断された。野薔薇は帳を確認して通れそうなら本部へ戻れ。なずなは私と特級の方に行くぞ」
「真希さん!私も……」
「オマエは結構消耗してんだろ」
行くと言いかけた野薔薇に真希は容赦なく事実を突きつける。
実際西宮との戦いの後、こめかみに弾丸を食らっているため、ぐうの音も出ない。
悔しそうに唇を噛む野薔薇に真希が続ける。
「それに、悟達にこのことを知らせなくちゃなんねぇ」
帳の中にいる学生だけで特級呪霊とまともに戦えば下手すれば死人が出てしまう。
いち早く本部待機の教師陣や術師と合流する必要がある。
野薔薇も渋々といった様子で本部へ戻ることを了承した。
「……あの、野薔薇ちゃん単独で本部まで戻るのって危なくないですか?」
徒党を組んでいる呪霊。
もし、戻る道中でその一味に遭遇してしまったら?
なずなの心配も最もだが、そこは真希にも考えがあった。
「川の対岸を少し北上したら真依がいるはずだ。野薔薇は真依と合流して特級が出たことを京都側へ伝達、真依と2人で本部へ行け」
げ、と露骨に嫌な顔をした野薔薇。
「事が事だ。学生の中で特級呪霊の相手ができそうなのは東堂しかいねぇ。私達より真依の方が早く連絡をつけられる」
人命がかかっている。もういがみ合っている場合ではないのだ。
野薔薇もそれは分かっているようで、これまた渋々うなずいた。