第10章 東京・京都姉妹校交流会
どうしようっ!?
川岸を南に下りながら、なずなは必死に考えた。
狗巻先輩は私を逃してくれたんだ。
あの場に残った先輩は特級呪霊の相手をしている。
誰か、誰か呼ばないと、先輩が危ない!
今はとにかく電話だ。
パンダ先輩は携帯電話を持っていないから、まず真希先輩に知らせて、それから伏黒くんと野薔薇ちゃんに。
虎杖くんも出てくれるといいんだけど……
電話帳から真希の番号をコールする。
焦っているせいか、1回、2回と鳴るコール音がやけに長く感じた。
お願い、早く出て……!
『なずな?どうし……』
「真希先輩っ!と、特級が!前に五条先生が言ってた特級呪霊が出て、狗巻先輩が私を逃してくれたんですけど、今、先輩が1人で相手してて……!」
3回目のコールで出た真希を遮り、悲鳴に近い声でまくし立てるように現状を伝える。
『ちょっと落ち着け。呪霊の数は?どこに出た?近くに京都校の連中はいたか?……私は野薔薇と川が湖に流れ込む辺りの森にいる。そこまで来れるか?』
焦るなずなをなだめるように少しゆっくりとした声だ。
「数は1体です。出たのは川を北上した森の中。たぶん団体戦の区域内ギリギリの所です。京都の人は近くには……っ!?」
いなかった、と続けようとしたなずなは前方の空を見て息を呑んだ。
どろりと夜闇が下りてくる。
なんで、帳が……?
真希にもそれが見えたのか、鋭く指示が飛んでくる。
『なずな、とりあえず合流するぞ。悟が言ってた呪霊は2体だった。人間と組んでるとも言ってたし、棘が相手してる1体以外にもいるかもしれねぇ。単独行動は危険だ』
「わ、分かりました。私、川を南に下ってるので、湖の方に行きますっ」
通話を切ったなずなは速度を上げて湖を目指した。