第10章 東京・京都姉妹校交流会
ドクンー
「!?」
突如鬼切が脈動した。
とっさになずなが鬼切に手を掛ける。
狗巻もただならぬものを感じて、木立を睨みつける。
強力な呪いの気配……!
間違いない。
ターゲットとして放たれた二級呪霊が近くにいる。
足音が近づいて来る。
固唾を飲んで木立の先を見つめていると、木の影から長い舌を出した呪霊が出てきた。
あれを祓えばゲーム終了だ。
なずなが鯉口を切ろうとした次の瞬間、何か肉質を切る音がした。
呪霊が出てきた木立のすぐ近く。
そして、白目を剥いた呪霊の首がてんと地面に転がった。
「え……?」
京都校の誰かが祓ったの?
しかし、人間ではない重い足音がそれを否定した。
"おや、2人ですか"
「……っ!」
首を刎ねられた呪霊の後ろから出てきたのは全身に模様のある筋骨隆々とした呪霊、目の部分に木の枝が生え、左腕を布で包んでいる。
その姿は、以前五条から似顔絵を見せられた特級呪霊と似ていた。
そして何より、先程の音。
ただの音で全然言葉ではなかった。
……言葉ではなかったはずなのに、意味は分かる。
凄まじい圧になずなの足はすくんだ。
今まで遭遇したどの呪霊よりも強い。
鬼切に手を掛けていても、抜刀する隙がない。
このままじゃ……!
『走れ』
「先輩っ!?」
狗巻の声が耳元で聞こえた。今は耳を塞いでない。
なずなの意思とは関係なく、勝手に足が走り出す。
狗巻をその場に残したまま。