第10章 東京・京都姉妹校交流会
鹿威しの音だけが、虚しく響く。
「ど、どうします?あの様子じゃ、作戦行動なんて、無理ですよね?学長もどっか行っちゃったし、私、あの人に殺されたくないですよ……」
おずおずと切り出した三輪。
「いいんじゃないかな?どうせアイツ、東京陣営まっしぐらだもん。勝手に暴れてくれるなら、私達はゲームに専念すればいいんじゃない」
こちらが動かなくても、東堂は東京チームを潰しに行く。
矛先をこちらに向けないためにも、無視した方がいいというのが、西宮の考えだ。
「でも私達は虎杖 悠仁を殺さなきゃでしょ?あの人、殺すまではやらないんじゃない?やりそうではあるけど」
「そうなると東堂を監視し、虎杖 悠仁に止めを刺す役が必要だナ」
真依とメカ丸が指摘する。
「呪霊の相手もあるから、どうせツーマンセルですし、ちょうどいいですかね?」
東堂と組むのが自分になりませんように、という三輪の祈りは加茂の言葉で打ち砕かれてしまった。
「いや、高専に所属する呪術師の中に、虎杖 悠仁のような半端者がいるのは由々しき事態だ。交流会以前の問題。加茂家嫡流として見過ごせん。私達全員で虎杖 悠仁を襲撃する」
一気に虎杖を暗殺する方向に傾く中、西宮が手を挙げる。
「待って、虎杖君と狗巻君が一緒にいたらどうするの?呪言師を前に雁首揃えるのは少しリスキーだよ。最悪一網打尽にされちゃうんじゃ……」
「確かにナ」
「いや、呪言は言霊。音に呪力を乗せるわけだから、こちらも耳から脳にかけて呪力で守ればいい」
解説しながら加茂は実際に耳から脳を呪力で覆ってみせる。
「呪言は対呪霊に特化した術式なんだ。術師にとっては来ると分かっていれば、そこまで怖いものじゃない」
「真希は私にやらせて、できれば茶髪の1年も」
「その発言、東堂と同レベルだよ」
加茂にはまったく煽る意図はなかったが、真依は苛立たずにはいられなかった。