第10章 東京・京都姉妹校交流会
「……他人の術式をペラペラと……」
「いいんだよ。棘のはそういう次元じゃねぇから」
そう言うと、真希はツカツカと虎杖に歩み寄る。
「……んなことより悠仁、屠坐魔返せよ。悟に借りたろ?」
六本木近辺の廃ビルで虎杖が渡された呪具だ。
しかし、少年院で遭遇した特級呪霊に壊されてしまった。
素直にその事実を伝えたら、ボコられそうな気配である。
「五条先生ガ、持ッテルヨ……」
消え入るような声で外を示す虎杖と舌打ちして腕組みする真希。
「チッ、あのバカ目隠し」
少年院で虎杖が呪具を壊したところを見ていた伏黒は、疑いの目を向けていた。
「……で、どうするよ?団体戦形式はまぁ予想通りとして、メンバーが増えちまった。作戦変更か?時間ねぇぞ」
「おかか」
「それは悠仁次第だろ。何ができるんだ?」
「殴る、蹴る」
そう言って虎杖は自分の腕を軽く叩く。
「……そういうの間に合ってんだよなー……」
パンダをはじめ、真希となずなも近接タイプ。
狗巻、伏黒、野薔薇は距離を取っても闘えるが、近接もある程度できるようになっている。
今更近接戦ができる者が増えても、作戦の幅はそこまで広がらない。
「えぇ……」
先輩にがっかりされても、特に呪術が使えるわけでなし、虎杖には肉弾戦しかない。
そんなこと言われても……と途方に暮れる虎杖をフォローするように伏黒が口を挟んだ。
「コイツが死んでる間、何してたかは知りませんが、東京校と京都校、全員呪力なしで闘い合ったら、虎杖が勝ちます」
伏黒に合わせるようになずなも手を挙げる。
「あの、私もそう思います」
その言葉に2年生3人は目を丸くする。
東堂と闘っている伏黒となずなが断言するのだ。
信憑性は高い。
「……面白ぇ」
真希の頭の中で変更後の作戦が固まった。