第10章 東京・京都姉妹校交流会
「なぁ、ホントごめんって……」
「許さん!」
虎杖が手を合わせて謝るが、野薔薇はツカツカと先へ行ってしまう。
これは相当根に持ってるヤツ……!
しかし、よくよく考えたら釘崎の怒りも分からないでもない。
自分が同じことをされたら?
五条先生の提案に乗る前にちゃんと考えるべきだった。
浮かれ過ぎてた……と虎杖は反省した。
一方でやっと状況を受け入れ始めたなずなは、目頭が熱くなるのを感じた。
「夢、みたい……っ」
死んだと思っていた同級生が目の前で喋って、動いている。
胸に大きな穴が空き、雨に打たれて血の気を失った変わり果てた姿なんかではなく、元気そのもの。
それは本当に奇跡としか思えないようなことで。
「泣くなよ、虎杖が気にする」
なずなが小さく嗚咽を漏らしたのを、伏黒が柔らかくたしなめる。
思わず声の方を見上げると、彼もとても穏やかな表情をしていた。
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「あのぅ、これは見方によっては、とてもハードないじめなのでは?」
どこから持ってきたのか、遺影の額縁を持ち、正座させられた虎杖のささやかな抗議は、野薔薇に一蹴される。
「うるせぇ、しばらくそうしてろ」
「まぁまぁ、事情は説明されたろ?許してやれって」
「パンダが喋った!?」
野薔薇をなだめるパンダに虎杖が驚きの声を上げる。
「しゃけしゃけ」
「……なんて?」
「狗巻先輩は呪言師だ。言霊の増幅・強制の術式だからな、安全を考慮して語彙絞ってんだよ」
伏黒の説明にピンと閃く。
「死ねって言ったら、相手死ぬってこと?最強じゃん」
しかしそれはパンダにすぐ否定される。
「そんな便利なもんじゃないさ。実力差でケースバイケースだけどな、強い言葉を使えばデカい反動がくるし、最悪自分に返ってくる。語彙絞るのは、棘自身を守るためでもあるのさ」
「ふーん、で、先輩はなんで喋れんの?新種のパンダとか?」
この質問にはなずなが答えた。
「パンダ先輩は呪骸なの。あ、呪骸っていうのは呪いの篭った人形のことで……」
聞き覚えのある言葉に虎杖は納得する。
「あー、なるほどね。呪骸なら入学の時の面談で闘ったわ。喋るのは初めて見たけど」