第10章 東京・京都姉妹校交流会
虎杖が箱から元気よく出てきたこと、なずなはにわかに信じられなかった。
……自分は幻覚でも見ているのだろうか?
あの時、少年院で引き抜かれた心臓を捨てられたところを見たのだ。
うつ伏せに倒れて、息をしてなかったのも確認した。
死んでいた、はずだった。
しかしそれを裏切るように、目の前に虎杖がいる。
そこから考えられることは……
「大丈夫?足、透けてない……?」
「幽霊じゃねぇと思うけど」
虎杖の足元を恐る恐る覗き込もうとするなずなに伏黒が口を挟む。
あの状況からどうやって生き返ったのか疑問は残るが、五条ならこういうことをやりなねない。
長年あの教師のイカレっぷりを見てきた伏黒にはその確信があった。
そんなこんなで若干遠巻きにしている2人。そこを横切って野薔薇が虎杖の出てきた箱をガンと蹴りつけた。
「おい」
「は、はい……」
「何か言うことあんだろ?」
野薔薇は口を引き結び、口調とは裏腹にその目に涙を浮かべている。
「……生きてること、黙っててスイマセンデシタ」
虎杖生存サプライズが盛大にスベった後、夜蛾から本題である交流会の説明が始まる。
「2日間にわたって開催される東京・京都姉妹校交流会、第1日目・団体戦ーチキチキ呪霊討伐猛レースのルールを説明する」
そのルールは指定された区画内に放たれた二級呪霊を先に祓ったチームを勝利とするもの。
区画内には三級以下の呪霊も複数放たれており、日没までに決着がつかない場合、討伐数の多いチームが勝利となる。
それだけのシンプルなもの。
「もちろん妨害行為もアリなわけだが、あくまで君達は共に呪いに立ち向かう仲間だ。交流会は競い合いの中で仲間を知り、己を知るためのもの。相手を殺したり、再起不能の怪我を負わせることのないように!」
五条を締め上げながらルールを説明する夜蛾の少し後ろで、いい気味と言わんばかりに歌姫が口元を押さえて笑っている。
「以上、開始時刻の正午まで、解散!!」