第10章 東京・京都姉妹校交流会
ひとりでに開いたのとその音になずなはびくりと肩をすくめる。
そして出てきた影に息を呑んだ。
「ハイ!おっぱっぴーっ!!」
中から出てきたのは物ではなくて、人間。
しかも、少年院で宿儺に心臓を抜き取られて死んだはずの、虎杖 悠仁その人だった。
「故人の虎杖 悠仁君でぇーすっ!!」
五条の明るい声がなぜか虚しく響く。
……え……?
伏黒、野薔薇、なずなの3人をはじめ、誰一人として状況を飲み込めず、場の空気が凍りついた。
対する虎杖はというと、
「ええぇぇぇっ!?」
こちらも非常に衝撃を受けていた。
少年院から帰還後、何らかのやり取りをして宿儺が心臓を治し、そこから五条の猛特訓。
ついこの前七海と任務に行って、そこに現れた魂に触れて形を変える術式を持つ特級呪霊に知り合ったばかりの友人を異形に変えられ、結局助けられなかった。
そして自分も人を殺した。
強くなったけれど、己が思い描いていた『正しい死』というものが分からなくなった。
本当にいろいろなことがあった2ヶ月間、虎杖はこの再会の日をそれはもう楽しみにしていたのだ。
より盛り上がると思ったから五条先生のサプライズ計画に乗ったのに!
それなのに、みんな全っ然嬉しそうじゃない!
嘘ぉ……と固まっていると、台車の向きを変えられる。
「はーい京都の皆さん、これが宿儺の器、虎杖 悠仁君ですよ〜」
しかし、京都校の生徒は先に五条からお土産として渡された人形を見ているばかり。
嬉しそうにしていたり、いらなそうにしていたり、感触を確かめていたりと虎杖には目もくれない。
「宿儺の器!?ど、どういうことだ……?」
唯一、京都校学長・楽巌寺 嘉伸だけが、驚きを見せた。
それに気づいた五条はわざとらしく手を振る。
「お、楽巌寺学長〜、いやぁ、良かった良かった。びっくりして死んじゃったらどうしようかと、心配しましたよ」
その声は大して心配してないどころか、どうでもよさそうな感情を孕んでいる。
「糞餓鬼が……!」
楽巌寺の睨みもどこ吹く風、ざまぁ見ろと五条は薄く笑った。