第10章 東京・京都姉妹校交流会
やや険悪なムードの中、最後に階段を上ってきた顔に傷のある巫女服の女性が手を叩き、やれやれといった表情を見せた。
京都校の引率の庵歌姫だ。
「内輪で喧嘩しないの。まったくこの子らは……それで、あのバカは?」
「悟は遅刻だ」
「バカが時間通りに来るわけねぇだろ」
吐き捨てるように答えた真希に伏黒は小さくツッコミを入れる。
「誰もバカが五条先生のこととは言ってませんよ」
そんなことを言っていると、ガラガラと何かの走る音が近づいてくる。
そちらを見ると、噂をすればなんとやら、五条が意気揚々と台車を押して、こちらに向かってきていた。
台車には大きな箱、その上にゆるい感じの人形がいくつか載っている。
「おっまた〜?」
ギャリギャリと音を立て、台車なのにドリフトを決めて五条は目の前で止まった。
それを見て舌打ちする歌姫と、対照的に目を輝かせる三輪。
「やぁやぁ皆さんお揃いで。ワタクシ、出張で海外に行ってましてね、これからお土産を配りたいと思います!」
「……唐突だな」
「時差ボケじゃない?」
何やら上機嫌な五条にパンダと野薔薇が眉を寄せる。
それを無視して五条はピンク色の人形をせっせと配り始めた。
「ハイ、京都の皆にはとある部族のお守りを。……歌姫の分はないよ?」
「いらねぇよ!」
人形を配り終えた五条は東京校の生徒達に向き直る。
「東京の皆にはコチラ!!」
見事なY字バランス(?)を決め、大きな箱を示す五条。
そのテンションの高さに周りはまったくついて行けない。
「ハイテンションな大人って不気味ね……」
そんなことを呟いた野薔薇をよそに、箱の蓋が勢いよく開いた。