第10章 東京・京都姉妹校交流会
少しして校門に到着した野薔薇は愕然として、フセンを挟んだ京都ガイドを取り落とした。
「なっ、なんで皆手ぶらなの!?」
「オマエこそなんだその荷物は?」
パンダの言う通り、野薔薇はキャリーケースを引き、リュックまで背負っている。
「なにって、これから京都でしょ?……京都『で』姉妹校交流会」
「京都の姉妹校『と』交流会だ。東京で」
「嘘でしょおおぉぉっ!何のために準備したと思ってるのよ!?」
頭を抱えて絶叫した野薔薇を見て、真希や狗巻、伏黒はどこか妙に納得した。
「……通りで最近会話が噛み合わないわけだ」
「ですね」
「しゃけ」
パンダに掴みかかる野薔薇をやれやれと眺める。
「去年勝った方の学校でやるんだよ」
パンダから交流会の仕組みを聞いても、野薔薇の怒りは収まらない。
「勝ってんじゃねぇよ!バカ!」
「俺らは去年出てねぇよ。去年は人数合わせで憂太が参加したんだ」
「里香の解呪前だったからな。圧勝だったらしいぞ。京都でやったから見てねぇけど」
野薔薇はそれを聞いて、ここにいる先輩達に矛先を向け続けるほど子供ではない。
だが、その怒りを鎮められるほど、大人でもなかった。
ガイドブックを丸めてメガホンを作り、明後日の方向へ怒りを込めて叫ぶ。
「許さんぞ、乙骨憂太ーっ!!会ったことねぇけどよーっ!」
「……逆恨みだな」
「しゃけ……」
「の、野薔薇ちゃん、乙骨先輩はすごく優しくていい先輩だよ?」
皆が諦める中、なずなだけが野薔薇をなだめようと試みたが、知るかよ!!と一蹴されてしまった。