第10章 東京・京都姉妹校交流会
「野薔薇ちゃん、もうすぐ9時だよ、集合時間に遅れちゃう……!」
東京・京都姉妹校交流会当日、なずなは野薔薇の部屋の前でヤキモキしていた。
朝9時に校門に集合と言われているのに、野薔薇が部屋から全然出てこないのだ。
もしかして体調不良、とも思ったが、部屋の中から「待って!」と元気な声がしたので、そうでもなさそうだった。
当の野薔薇はというと……
「だーっ!閉まらないじゃない!!」
旅行の用意を詰め込んだキャリーケースの上に乗って、なんとか蓋を閉めようと奮闘していた。
しかし、中身がはみ出して到底収まりそうにない。
仕方ないと肩を落とし、キャリーケースに入らない分はリュックに入れ替えることにする。
今から入れ替えとなると、9時集合にギリギリ間に合うかどうか。
「ちょっとすぐに出るのは無理そうだわ……なずな、先行ってて!」
少し遅れるかもとドアの向こうで待っているなずなに伝えた。
部屋の中から聞こえてきた野薔薇の声になずなはうなずいた。
「分かった、先輩達には遅れるって伝えておくね」
そう言って学生寮を後にする。
校門にはすでに野薔薇以外のメンバーが揃っていた。
「あれ?なずな1人か?」
パンダがこちらに向かってくるなずなに気づいた。
てっきり野薔薇と一緒に来るものだと思っていたが、なずなだけだ。
「野薔薇ちゃん、準備に手間取ってるみたいで、少し遅れます」
「準備って……団体戦は昼からだし、何を準備してるんだ?」
「さ、さぁ……?」
なずなも実際の野薔薇の様子を見ていないのでハッキリとしたことは分からず、尋ねてきたパンダと顔を見合わせて同様に首を傾げる。