第9章 弱り目に祟り目
ツカモトを寝かしつけながらの気の抜けない映画鑑賞を始めてしばらくしたある日。
いつもは任務やら何やらで五条が虎杖の訓練に付き合えない時に映画鑑賞することが多いのだが、今日は珍しく五条も一緒にいる。
ちょうどいい機会と思って、小さな疑問を尋ねてみた。
「なぁ先生、1年の中だと誰が一番呪力コントロールが上手いの?やっぱ伏黒?」
等級も一番高いし、有名な呪術師の家系の血を引いてるらしいし、呪術にも詳しい。
そう思ったのだが、五条は即答せず、少し考えている。
「そうだねぇ、皆それぞれ術式が違うから単純な比較は難しいけど……なずなかな」
「え、そうなの!?」
意外な名前が飛び出してきた。
「ってか、渡辺って呪術使えるんだ?」
どっちかというと自分に近い部類だと思っていただけに虎杖の驚きも大きい。
その様子を見て五条はニヤリと笑う。
「悠仁、なずなは自分と同じだと思ってたろ?」
「だって正直、伏黒とか釘崎と違ってあんま呪術使ってるって感じしねぇし……」
確かに数々の式神を使役する伏黒や藁人形と五寸釘で相手にダメージを与える野薔薇と比べて、なずなの術式は身体強化のみ。
側から見ると、術師が自身の呪力で身体強化するのと変わらない。
「なずながすごいのは、自分以外の呪力をコントロールしてるところだ。なずなの術式は鬼切の呪力を吸い上げて自分の身体強化を行う。基本、他者の呪力っていうのは有害だ。でも、なずなはそれを息をするのと同じように自然に使ってる」
いくら術式の効果とはいえ、宿儺の指を取り込んだ虎杖と違って、なずなと鬼切は完全に別個だ。
自分の呪力を扱うのとはわけが違う。
「ま、恵や野薔薇と比べると出力量・術式範囲は劣るけど、コントロール面だけで言えば、なずなが一番だろうね」
「へぇ……」
機会があれば、1年全員で映画鑑賞特訓をするのも楽しいかもしれない。
そんなことを考えながら、虎杖は自分以外の3人は今頃どうしているだろうと思いを馳せる。