第9章 弱り目に祟り目
なずなの言い分も理解した上で、真希は難しい顔をしていた。
「……現実的じゃねぇな。東堂は頭も切れる。オマエの反転術式のネタにはすぐ勘付くぞ。そうなれば押し切られて終わりだ」
東堂にパワー勝負に持ち込まれたら、なずなはなす術なく押し負ける。
ただ押し切られるだけで済めばまだいい。
だが東堂のことだ、反転術式を使えると分かれば、なずなの足を潰して治している最中に他のメンバーを襲撃、なんてことも容易に想像できる。
「足止め役はパワー勝負になってもある程度東堂を止められる奴……まぁ、順当に考えて、パンダか恵だろうな」
「そうですか……」
未熟だというのは自分でも分かっていたが、面と向かって突きつけられるのは、思った以上にショックだった。
「あんま落ち込むなよ。真希はなずなが役立たずだなんて言ってないぞ?適材適所ってヤツだ」
「しゃけ」
しゅんと項垂れるなずなをパンダと狗巻が励ます。
真希もそれに続いた。
「そうだぞ、勘違いすんな。東堂の足止めが効いてる内に、私達は団体戦の目標を達成しなくちゃならねぇ。呪霊の討伐数や隠された呪物の回収、最終目標が何にせよ、スピード勝負だ」
なずなの勝負どころでの判断の早さを東堂の足止めに使ってしまうのは惜しい。
真希はニヤリと笑って、なずなの額を小突いた。
「なずなはパワー勝負よりこっちの方が向いてる」
「はい……!」
足手まといに思われていたらと不安だったのだ。
でもそんなことはなかった。
先輩達の期待に応えたいと、なずなは力強くうなずいた。