第9章 弱り目に祟り目
翌日、すっかり熱が下がったなずなが野薔薇と一緒に食堂へ向かうと、真希、狗巻、パンダ、伏黒が勢ぞろいしていた。
「お、なずなも復活したな。2人ともちょっとこっち来い」
パンダがヒラヒラと手を振る。
野薔薇となずなが呼ばれた通りにやってきて早々に真希が切り出した。
「交流会がどんな内容になるか、まだ分からねぇが、初日の団体戦、作戦をおおまかに立てておく」
真希の前に広げられたノートには東京校のメンバーの名前に丸がついていたり、その丸が二重線で消されたりしている。
「団体戦の内容にもよるが、基本は2人1組で動くことになると思う。というわけで、1,2年、前後衛のバランスがよくなるようにペアを考えた。私と恵、パンダと野薔薇、棘となずな」
なずなは思わず狗巻の方を見て、ふと疑問を覚えた。
「……あれ?でも私がいたら、狗巻先輩は呪言が使えないんじゃ……」
言霊を聞いた相手にその内容を強制する呪言。
強力な術式だが、近くにいてはなずなまで影響を受けてしまう。
それでは狗巻が満足に戦えない。
「ツナツナ」
心配ないと言わんばかりに狗巻が耳を塞ぐジェスチャーをする。
「耳を塞げばいいんですか……?」
なずなも真似て耳を塞ぐとパンダからアドバイスがきた。
「ただ耳を塞ぐだけじゃダメだぞ。塞いだ手に呪力を込めるんだ。それで呪言は防げる」
でも両手で耳を塞ぐと、今度はなずなが戦えなくなってしまうのが悩みどころだ。
それが顔に出ていたのか、パンダがさらに続ける。
「手で塞ぐ以外に耳と頭の内側を呪力で守るのも効果的だ。ただこれはちょっと慣れが必要だけどな」
その言葉になるほど、とうなずく。
確かに少し難しそうだが、狗巻が呪言を使うタイミングだけなら、なんとか防げるレベルまでできるようにしておきたい。
普段の基礎訓練に組み入れて間に合うかどうか……
頑張らないと、となずなは意気込んだ。