第9章 弱り目に祟り目
次になずなが目を覚ますと、窓にはカーテンが引かれ、明かりも点いていた。
いつの間にか夜になっていたようだ。
薬のおかげか、身体はもう熱くない。
ゆっくりと視線を動かすと、ベッドの隣に置いた椅子に座っていたのは、伏黒ではなく野薔薇だった。
野薔薇の方もこちらに気づいたようだ。
「起きたわね。着替えられる?」
汗かいて気持ち悪いでしょとクローゼットを開いて着替えを探し始める。
「野薔薇ちゃん、今日の任務行けなくてごめんね……」
「そんなの気にしなくていいわよ。体調はどうなの?」
「うん、もう大丈夫」
うなずくなずなに野薔薇は疑いの目を向ける。
「ホントに?ちゃんと薬は飲んだの?まだ顔赤いわよ」
「えっ……」
――オマエに呪われたってなんてことない――
不意に伏黒の言葉が蘇り、どきりと心臓が跳ねた。
自分でも顔に熱が集まっていくのが分かり、とっさに掛け布団を顔まで被る。
「ぜ、全然平気!もう治ったよ……!」
さらに赤くなったなずなに野薔薇はため息をつく。
「やっぱりまだ本調子じゃないんじゃない……着替え、これでいい?」
野薔薇が持っているのは柔らかい素材の部屋着。
今の季節の寝間着はなずなが着ている1着しかないので、着替えるとしたらこれしかない。
「うん、ありがとう」
野薔薇から着替えを受け取り、脱衣室に向かう。
日中に感じた身体の重さはもうないし、視界が揺れることもない。
顔は相変わらず熱いが、確実に体調は良くなっていた。