第9章 弱り目に祟り目
「……伏黒くん」
食器を片付けて戻ってきた伏黒を呼び止める。
しかし、さらに迷惑をかけてしまいそうで、次の言葉がなかなか出せない。
「どうした?」
伏黒は布団で口元まで隠しているなずなを促す。
「その、迷惑じゃなかったら……もう少しここにいてくれないかな……?」
その控えめな言葉に伏黒も力が抜けたようにフッと小さく笑った。
「迷惑じゃねぇよ。もともと釘崎が任務終わって戻るまでいるつもりだったし」
「……ありがと……」
ホッと胸を撫で下ろしたなずなに今度は眠気がやってきた。
安心したように再び寝入ったなずなの熱はまだ下がりきっていない。
薬が効き始めるまでもう少しかかるか。
本当は服も着替えさせるべきだが、それは野薔薇に任せた方がいいだろう。
せめてもと思い、汗で顔に張りついている髪を払ってやると、寝ているなずなに手を掴まれた。
掴まれたというより触れられたに近い弱々しい力加減。
外そうと思えばすぐ振り払えそうだったが、そのままにしておくと、おもむろになずなが繋いだ手を頬に持ってくる。
熱のある身体に冷たい伏黒の手が心地良いのか、抱き込むように頬をすり寄せていた。