第9章 弱り目に祟り目
しばらくして伏黒が卵雑炊を作って戻ってきた。
食べすぎないようにちょうど茶碗一杯分ほど。
本当はもっと食べてほしいが、作ったら作った分だけなずなは気を遣って食べ切ろうとする。
無理して食べすぎてしまうと、また戻してしまうかもしれない。
「渡辺、今朝のこと覚えてるか?」
息を吹きかけて雑炊を冷ましているなずなに尋ねる。
「えっと、……あんまり覚えてなくて……」
熱で少し朦朧とする頭で考えてみても一度起きたような覚えはあるが、何をしたのかまで思い出せない。
「釘崎がオマエを呼びに来たときに倒れたことは?」
そう言われると、確かに野薔薇の声はしたような覚えがある。
なぜ野薔薇が来たのかと考えていくと、あることに思い当たった。
「……今日、任務だった……!」
「それは大丈夫だ。交代で別の術師が充てられてる。オマエが倒れた後、家入さんに来てもらって、今日は薬飲んで寝てろって」
知らぬ間にいろいろな人に迷惑をかけてしまっている事態に、発熱とは別の汗がなずなの額に流れた。
「気にするな。今は治すの優先だ」
伏黒の言う通り、この状態で任務に出ても足手まといにしかならない。
迷惑をかけてしまった人への謝罪とお礼は治した後だろう。
「後で、ちゃんとお礼を言っておくね……いただきます」
一口食べると不思議と少し食欲が戻ってきた。