第9章 弱り目に祟り目
伏黒のスマホが野薔薇からの着信を知らせた。
久々の休日なのにと煩わしく思いつつも電話に出る。
「釘崎か、なんだ?」
『アンタ、ちょっと手貸しなさい!』
「は?」
『昨日から真希さん出張で、私ひとりじゃどうにもなんないのよ』
野薔薇は焦っているようで要領を得ない。
「だから、何なん……」
『なずなが熱出して倒れたのよ!』
「!……すぐ行く」
伏黒が駆けつけると屈んだ野薔薇の前には寝間着姿のなずなが倒れていた。
顔は真っ赤、髪も汗で濡れている。
「私がノックしたから、それに出ようとして途中で力尽きたみたい」
「とりあえずベッドに運ぶぞ」
ぐったりとして浅い呼吸を繰り返しているなずなを抱え上げると、服越しでも発熱が分かるくらい身体が熱い。
「私、硝子さん呼んでくるわ」
「ああ、頼む」
なずなをベッドに下ろして布団を掛けてやる。
体温計や常備薬がないか部屋を見回すが、それらしいものどころか、そもそも物があまり置かれていない。
女子の部屋なんだから、もっと色々あるのかと思っていた。
いや、実際に入ったのは初めてなので分からないが。
他に物がありそうなのはクローゼットだが、さすがに本人の許可なしに開けるのは憚られる。
大人しく家入を待つしかなさそうだ。