第9章 弱り目に祟り目
高専に到着し、伏黒はなずなを女子寮まで送った。
「ちゃんと休めよ」
その言葉にうなずき、改めて伏黒を見ると濡れた制服が目に入る。
「……制服、汚しちゃってごめん……」
ただでさえずぶ濡れだったのに、彼に縋って大泣きして、冷静になって考えると、相当迷惑をかけてしまった気がする。
泣き腫らした顔で眉を下げるなずなを見て、伏黒もふっと息を吐いた。
「こんなの平気だ。気にするな」
「うん……ありがとう」
そうして伏黒と分かれ、自室に戻ったなずなは、ズルズルとドアの前で座り込み、膝に顔を埋める。
自分も同罪だと言ってくれた。
その言葉で私は闇夜の中に光を見たような感覚がしたの。
あの人を殺してしまった罪悪はたぶん消えないだろうけど、どうしようもなく凍えていた心があたたかくなった。
嬉しかった。
それは本当のこと。
でも、後から後から不安が湧き上がってくる。
私はなんてことをしてしまったんだろう。
あんな言葉を言わせて、伏黒くんを縛ってしまった。
「ごめん、なさい……」
私、あなたを呪ってしまった――……