第9章 弱り目に祟り目
濡れ鼠になっているなずなを抱き寄せる。
そうしないと手をすり抜けてどこかへいってしまいそうな気がしたから。
腕に収まった一回り小さいなずなの身体は、雨に濡れそぼった寒さで震えていた。
自死を選んでしまうほど、心を傷めているなずな。
自分が彼女をこれほどにまで追い込んでしまった。
「無理することない。俺や伊地知さんでも、家入さんや先輩達とか釘崎にも弱音を吐いていい。……あまり勧められないけど、五条先生だって。本当にしんどかったら呪術師を辞めたっていい」
無意識のうちに抱きしめる腕の力が強まる。
そして絞り出すように続けた。
「でも、命だけは手放さないでほしい。……オマエがいなかったら、昨日俺は死んでた。釘崎もオマエがいなくなったら悲しむと思う。俺だって、失うのは虎杖だけで十分だ」
「……っ!」
私は、なんてことを……
……大事な人を失う悲しみを私は知っているのに。
それなのに大切な友達を同じように傷つけてしまうところだった。
温かい腕の中にすっぽり包み込まれて、なずなは静かに涙を流した。
「ごめ、なさ……ごめんなさい。私、虎杖くんに命懸けで助けてもらって生き残れたのに、長生きしろよって、言われたのに、捨てるところだった……!」
「謝らなくていい。言っただろ、俺も同罪だ。そんなに自分ばかり責めるな」