第9章 弱り目に祟り目
――梔子駅――
足の向くままになずなが行き着いた先は日野 雪子を殺害した場所。
あの呪霊に「ユキちゃん」と呼ばれていた日野 雪子。
雪子は呪霊のことを「あっちゃん」と呼んでいた。
『あなたも大事な人を失えば、あたしの気持ちが分かるわ』
……分かるよ……
私も知ってるよ。
お父さん
お母さん
兄さん
弟の弘也
そして虎杖くん
みんな亡くしてしまった大事な人だ。
大事な人を失うと、胸に穴が空いたような感覚がする。
私は、あっちゃんの目の前でユキちゃんを殺した。
あっちゃんからユキちゃんを奪った。
あの時、ユキちゃんを奪われたあっちゃんは悲鳴を上げた。
人間と呪霊だったけど、あの2人は確かに友人同士だった。
私は、大切な友人同士だったあの2人を引き裂いた。
ごめんなさい――
ごめんなさい――
私自身は何も失ってない。
それなのに、胸が重くて寒くて痛い。
……私は、加害者だ。どうしようもないひどい人間だ。
『まもなく、2番線に列車が参ります。黄色い線の内側までお下がりください。通過電車です。ご注意ください』
あぁ、ここから飛び込めば、こんなひどい私も消えてなくなることができるかな……
そう思ったら、少しだけ身体が軽くなった気がした。
自然とホームの端に足が向く。