• テキストサイズ

妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第9章 弱り目に祟り目



「なずな、そんなに手洗ってどうしたのよ?」

女子トイレの洗面所でゴシゴシと手を洗うなずなに、野薔薇が怪訝そうに声をかけた。


「……落ちないの……赤いの、落ちないの……」

なずなは手を止めず、どこか無機質な返事をする。

「何言ってんのよ?それ、絶対洗いすぎ。そんだけ洗ったら、手も赤くなるわよ」

問答無用で水を止めた。
なずなもやっと顔を上げる。


「お昼は?もう食べたの?」

「……うん……」

嘘だった。

本当は食べていない。
まったく食欲がないのと、まだ気持ち悪さが残っていたから。

報告書をなんとか書き終わって、さっきも少し胃液を吐いていた。

でも心配させてしまうから、それは絶対に言わない。




そのまま野薔薇と分かれ、なずなは部屋に戻った。

野薔薇がなずなの様子を不審がっていることには気づかなかった。

















夕方というには少し早い時間に伏黒が任務から戻ると、心配していた報告書はすでに出来上がっていた。


それを手に取り、目を通していく。
終わりに向かうにつれ、字が乱れているのが分かる。


「っ、なんだよ、これ……!」


最後まで読んで瞠目する。

そこには呪霊と呪詛師の最期が生々しいほど克明に書かれていた。


ただの報告書だ。
ここまでの描写は必要ない。


何より、どんな心理状態でこれを書いた?

任務に行く前に無理にでも取り上げておくべきだった。


/ 1120ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp