第9章 弱り目に祟り目
――ごめんなさい
――ごめんなさい
私は決して許されないことをしました――
1人の尊い命をこの手で奪ってしまった。
今でも鮮明に思い出せる。
本来は呪霊を切るための鬼切で、あの人の背後から肺と心臓を切りつけた。
切った時の柔らかい感触は筋肉や臓器を、硬い感触は骨を断った時のものだろう。
伏黒くんを助けるためだった……
確かにそうだったけれど、彼女の術式を止めれば済む話だった。
術式を止めるだけなら、別にそこまでする必要はなかったはずだ。
少し怪我を負わすなり、気絶させるなりして集中できなくさせれば、それでよかった。
……でも、私は……
『ヨクモ、ユキチャンヲ……許サナイイィイッ!』
呪いの叫び声が頭の中で響く。
あの呪霊は友人が殺されたことに激昂していた。
大切な人を奪われたのだから、それは至極当然の反応。
他にいくらでも方法はあったはずなのに、迷わず最悪の手段を選んだ。
私の両手は、赤色に染まっている……