第8章 同罪
しかし、
呪霊が腕を振り抜いても空を切る感覚しかなかった。
間一髪で玉犬・渾がなずなを掴んで退避させたのだ。
鏡感呪法が解けたことで、伏黒も体勢を立て直していた。
「渡辺、しっかりしろ!」
背後に退避させたなずなに呼びかけるが、自分の腕を呆然と見つめるばかりで返事もない。
鬼切も日野 雪子に突き刺さったまま。
この様子では鬼切を呼ぶこともできないだろう。
とても戦える状態ではない。
「邪魔スルナァァア!!」
呪霊は標的を伏黒に切り替え、向かってくる。
なずなから狙いが逸れたのは伏黒にとっては好都合。
自分と渾であの呪霊を祓う。
治癒する隙は与えない、一撃で頭を潰す。
怒り狂って単調になった呪霊の動きは、最初の時よりずっと読みやすい。
大きく振りかぶり、凄まじい勢いで伸びてきた呪霊の腕を避ける。
体勢を立て直す前に、正面から伏黒の黒刀、背後から渾の爪が呪霊の頭部を捉えた。
「アアアアァァッ!!」
頭を切り飛ばされた呪霊は、強烈な断末魔を上げて煙のように消えた。
梔子駅の一連の復讐劇はこれで幕を閉じる。
息絶えた雪子は、復讐を果たせなかったとは思えない、どこか穏やかな表情をしていた。