第8章 同罪
「ユキチャアァァンッ!!」
耳をつん裂くような呪霊の悲鳴でなずなは現実に引き戻された。
「……ぁ……」
鬼切は黒い服を纏った細い背中に深々と切り込んでいる。
手と顔についた赤色からは濃い鉄の臭いがした。
なずなが思わず鬼切から手を離すと、細い背中はドサリと倒れた。
力なく投げ出された白く細い手は呪霊ではなく、日野 雪子のもの。
右肩から切り込んだ鬼切は雪子の胸の中央、心臓にまで達していた。
倒れた身体の周りにはゆっくりと血溜まりが広がっていく。
わたしが、ころした……
足から力が抜けて、膝から崩れ落ちる。
腕についた返り血が否応なく目に入った。
呪霊を斬った時と違い、いつまでも消えない赤色。
背筋がゾッと寒くなる。
「ヨクモ、ユキチャンヲ……許サナイイィイッ!」
激昂した呪霊が手を伸ばしてくるが、なずなは凍りついたように動けなかった。
なずなの頭に呪霊の手が迫る。
殺せると確信した呪霊がニィィと嗤った。