第8章 同罪
このままじゃ伏黒くんが殺される……!
どうしよう、どうすればいいの……?
座り込んだなずなは全身を苛む激痛を堪えながら、なんとか意識を保っていた。
落ち着け私、考えるの……!
痛いだけ。
別に怪我をしてるわけじゃない、呪術で「痛い」と勘違いしてるだけ。
電車に撥ねられて大怪我した時だって動けたんだから、今だってできるでしょ……!
鬼切を駅の床に突き立て、杖代わりにしてなんとか立ち上がる。
壁を這うようにして一歩、一歩と進む。
「くっ……!」
階段に辿り着く頃には少しだけ、痛いのに慣れてきた。
手すりに肘を掛けるようにして、そこで体重を支えて階段を踏み外さないように下る。
「……っはぁ、……はぁっ」
途中、歩みを止めて痛みをやり過ごすように浅く呼吸する。
その時ー
「ぐっ、あっ!」
下のホームから伏黒の声が聞こえた。
伏黒くんが、危ない……!
なずなの頭の中で何かがプツンと切れる。
身体の痛みなんてどこかに吹き飛んだ。
無我夢中だった。
階段の踊り場まで駆け降り、ホームまで飛び降りる。
うずくまる伏黒くんの前に見えた影。
そこへ向けて、ただがむしゃらに鬼切を振り下ろしていた。
柔らかいものと硬いものを切り裂いていく感触。
一瞬遅れて、生温かい液体が腕に、顔にかかった。