第8章 同罪
線路に落とした呪霊は二級呪霊の中でも強力な部類だ。
下手すると準一級に近い。
「アアァァ、イタイ、イタイィ」
自分と玉犬・渾で攻撃を畳み掛けているが、よく避けられるし、傷つけてもすぐ治してくる。
「……!」
その相手をしながら、背後に現れた殺気に黒刀を振り抜いた。
ガキィンと金属がぶつかり合う音がして、背後の何者かの武器が弾き飛ばされる。
振り返った伏黒が怪訝な顔をした。
なずなの姿をしているが、違うと確信できる。
以前、刀は死んでも離すなと言っていた通り、特訓でやり合ったとき、伏黒は一度もなずなの武器を落とせなかった。
そしてなずなが刀を弾き飛ばされたところもほとんど見たことがない。
この程度の攻撃で彼女が武器を手放すことなどあり得ない。
伏黒はすぐさま蝦蟇を呼び出し、なずなの姿をした何者かを拘束する。
今この駅に、この帷の中にいる人間は、伏黒となずなと日野 雪子のみ。
帷の外から侵入した可能性もなくはないが、それなら伊地知から何らかの連絡があるはず。
「オマエ、日野 雪子だな。渡辺をどこへやった?」
低い声で問いただす。
すると、相手はけらけらと笑い出した。
「なんですぐバレちゃうのよ……渡辺さんは無事よ。動けないように足止めしてるけどね?」
雪子はふぅ、と息をつく。
捕まちゃった。
やっぱりあの時、ホームから突き落とすのはこっちの男の子の方がよかったかもしれない。
……でもどうかな?
渡辺さんも怪我が治ってたし、あまり意味がなかったかも。
……それでも、諦めるわけにはいかない。
あたしにはもう時間がないのだから。