第8章 同罪
やめて、
もう失いたくないの
目の前で失うなんて、堪えられない
こみ上げてくる涙をなんとか止め、懸命に考える。
ここで泣いても何も変えられない……!
考えて、私にできることは、何?
痛くて動けない。
でも、持っていかれたのは鬼切。
だったら、動けなくてもやりようはある。
……絶対に、伏黒くんを斬らせはしない。
「鬼、切っ……!」
「あら?」
なずなの呼び声に応え、鬼切は雪子の手元を離れ、なずなの手元に落ちた。
しかし、武器を取り上げられたというのに雪子は余裕の表情だ。
「その刀、鬼切っていうのね。名前が分かれば、別に本物じゃなくてもいいわ」
今度は彼女の持っているナイフが形を変え、鬼切そっくりになってしまう。
「なっ、んで……?」
痛みに顔を歪めながら尋ねたなずなに雪子は目を丸くした。
「あなた痛くないの?普通の人なら激痛で気絶してると思うのだけど……まぁいいわ、教えてあげる。これはあたしの拡張術式。姿と本名を知っているものに変化することができる術式なの」
そう言いながら、なずなに背を向け、階段を下り始めた。
「や、めて……」
懇願するように絞り出されたなずなの声は、雪子には届かない。