第8章 同罪
「呪、術……?」
「そう、あたしの呪術は半径20mくらいの範囲の人と感覚を共有できるの」
「か、感覚を共有?」
「今あなたが共有しているのは、あっちゃんの痛みよ」
あっちゃんが自殺した時の、電車に撥ねられて全身バラバラに引き裂かれた痛み。
あたしに取り憑いたあっちゃんはこの痛みをずっと抱えている。
「くっ、あああっ!」
術式が開示された影響で効果が高まり、さらなる激痛がなずなを襲った。
「あたし達の邪魔をするなら容赦しないわよ、渡辺 なずなさん?」
「ど、して……名、前知って……!?」
「昨日病院に運ばれる時にそう言っているのが聞こえたわ。あたしもあの時ホームにいたのよ」
痛みで鈍る意識をたぐり寄せながら、なずなは必死に考える。
周囲と感覚を共有する術式。
どうして見えなかった呪霊が今は見えているのか。
……周りにいた非術師と感覚共有していた?
今は範囲内に非術師がほとんどいないから、呪霊も見えているの……?
この術式を呪霊と戦っている最中に使われたらまずい。
なんとかして駅から引き離さないと。
雪子はなおも続ける。
「あたしの大切な友達はアイツらに追い詰められて自ら命を絶った。そんな罪深い人達なんて死んで当然だわ。何にも知らない部外者が邪魔しないで」
「その人達に、復讐したとしても、あなたの友達は生き返らないっ、それに、これ以上呪霊が取り憑き続けたら、あなたの身体が危ない……!」
「そんな事どうだっていいわ。あたしはアイツらを地獄に落とせるなら、自分の身体がどうなったっていいの」
雪子の目は呪霊に侵され、弱っているとは思えないほどギラついている。
その心の中で煮えたぎる怒り。
―ひどい
どうしてあっちゃんをあそこまで追い詰めたの?
―酷い……
あっちゃんが何をしたっていうの?
―非道い……!
なぜあっちゃんを殺した奴らは何の罪にも問われないの?
―――ヒドイ!!
どうしてあっちゃんは死ななければいけなかったの?
……なんで、あたしは……っ!
「……そうだ、あなたも同じになればいいんだわ……」