第8章 同罪
終電の到着時刻は23:48。
その少し前に伊地知、伏黒、なずなは梔子駅の改札前にいた。
階段の先にあるホームからはただならぬ呪いの気配がしている。
「昨日私が確認した呪霊と同じ気配です。予想通り、この先に日野 雪子と呪霊がいます」
手筈通り、終電から乗客が降りたら急いで駅から出てもらう、多少手荒になってしまっても、だ。
「玉犬・渾」
伏黒の影から黒と白の毛を持つ大きな犬が出てくる。
後脚で立っている様子は犬というより狼男だ。
『まもなく2番線に電車が参ります。黄色い線の内側までお下がりください』
3人に緊張が走る。
アナウンス通り、電車が到着する。
しかし、降りる乗客はいない。
「乗客がいないのは幸いです。伏黒君と渡辺さんは呪霊討伐と日野 雪子の保護を。私はすぐに帳を下ろします」
伊地知の言葉に2人は頷いて、ホームに続く階段を駆け降りる。
降りた先にはベンチに腰掛けた日野 雪子とその後ろに呪霊。
今はしっかりと視認できる。これまでこの駅で見たどの呪霊よりも格段に強い気配だ。
先行させた玉犬が呪霊に襲いかかり、線路に追い落とした。
玉犬の攻撃を受けた呪霊は悲鳴を上げる。
「術式を使われて感知できなくなる前に祓うぞ」
「うん、私は日野さんを伊地知さんのところへ連れて行ったら、すぐ戻るね」
伏黒が頷いて玉犬の後を追うのを確認して、なずなは踵を返して呆然とした雪子の元へ。
「ここは危険です。早く逃げましょう」
雪子の手を取り、急いで階段を駆け上がる。