第8章 同罪
終電間近の梔子駅――
雪子は下り線のホームのベンチで終電を待っていた。
「ユキチャン、ユキチャン」
背後からどこか楽しそうな声で呼びかけられる。
「えぇ、そうよ。今夜アイツがここにくるんだって」
あっちゃんを見殺しにした薄情な人達の中の1人。
今も何事もなく生きているのが許せない。
本当は数日前に死ぬはずだったのに、見たこともない制服の女子高生に邪魔されてしまった。
でもその女子高生も昨日突き落としてやったから、今は病院のはず。
今度はうまくいくわ。
電車が使えないのは残念だけど、あっちゃんの呪いは大きく強くなってるし、あたしだっていつでも殺せるようにナイフを持ってきた。
『まもなく2番線に電車が参ります。黄色い線の内側までお下がりください』
終電の到着を知らせるアナウンスが流れた。
雪子の唇がゆっくりと弧を描く。
さあ、裁きの時はすぐそこよ――……
到着した最終電車の扉が開く。
列車内にはまばらに人が乗っているが、誰も動く気配がない。
結局梔子駅で降りる乗客はおらず、呆然とした雪子を残して電車は走り出してしまった。
……どういうこと?
なんで誰も降りないのよ。
「アアアァァッ!!」
突如、あっちゃんが悲鳴を上げた。