第8章 同罪
まず、日野 雪子が駅を訪れていることを確認し、彼女に聞こえるようにわざと大内 秀子に電話をしてもらう。
電話内容は今日の帰りが終電になりそうだから迎えにきてほしいというもの。
当然誘き出すための罠なので秀子は電車には乗らないが、日野 雪子は殺し損ねた秀子を狙って深夜の梔子駅に来るはずだ。
そこを伏黒となずなで叩く。
「終電が到着し、乗客が降りたら駅から急いで出るよう案内します。その後、帷を下ろしますので、伏黒君は呪霊の討伐を、渡辺さんはその間に日野 雪子を保護してください。もし彼女が主犯だったとしても、呪霊がいなければ、重度の被呪者ですからね」
伊地知が大内 秀子に協力を仰ぐため、一旦解散する。
伏黒となずなは駅で日野 雪子に顔を見られている可能性があったため、高専に待機ということになった。
伏黒がどう戦うか考えていると、なずなが心配そうに声をかけた。
「あの呪霊、見えなかったけど、大丈夫?」
「少なくとも玉犬は反応してたから、式神には感度低下が働いてない。式神中心で戦えばなんとかなるだろ」
実際に呪霊を見た伊地知が任務続行可能と判断している。
そのため伏黒も呪霊と一対一であれば、対応可能と考えた。
「……役に立てそうになくて、ごめんね」
なずなには姿の見えない呪霊と戦う術がない。
鬼切は感知しているが、それだけでは到底捉えきれないのだ。
……もっと鬼切を使いこなせれば、ちゃんと戦えたかもしれないのに……
しゅんと俯いたなずなに伏黒は謝るなと言って続ける。
「適材適所ってやつだろ。俺だって周りに人がいたら、満足に戦えないかもしれない。日野 雪子の方は頼むぞ」
「うん……!」
その夕方、折よく大内 秀子の協力が得られ、日野 雪子に電話を聞かせることができたと連絡が入った。
2人は気を引き締めて夜を待つ。