第8章 同罪
「被呪者の身元が判明しました。名前は日野 雪子、林 敦美の中学時代の同級生です。高校は別々だったようですが、中学卒業後も交流があり、林 敦美の自殺後も度々彼女の家を訪れています」
高専に戻った翌日、被呪者の素性を洗い出した伊地知から報告を受ける。
「彼女は一般家庭の出身です。駅で私達が確認した通り、呪いに対する耐性はないとみていいでしょう」
伏黒もなずなも雪子の病的な痩せ方を思い起した。
耐性もなく、11ヶ月も呪霊に取り憑かれていたのだ。あのやつれ具合にも納得がいく。
一刻も早く呪いを祓わないと、身が保たない。
しかし、駅に呪霊が現れていたということは、雪子自身も梔子駅に来ていたということだ。
「その日野 雪子が呪霊に人間を襲わせていたとかはありませんか?」
「可能性はあります。ただ断言はできません。呪いの耐性がないということは、取り憑いた呪霊も見えていないかもしれない。ですから今回は人気のない時間帯に誘き出そうと思います」
日野 雪子が自分の意思で呪霊をけしかけているのか、それとも呪霊が彼女を操って駅に向かわせているのか、定かではないが――
「これまでの自殺者数と期間を鑑みると、日野 雪子はかなり高頻度で梔子駅に来ているはずです」
そう言って伊地知は彼女を誘き出す策を話し始めた。