第8章 同罪
伊地知は林 敦美の実家に来ていた。
応対したのは敦美の母親、とりあえず母親には呪霊は憑いていない。
それを確認した伊地知は、なるべく当たり障りのない名目で、敦美の自殺前後の話を聞いた。
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粗方話を聞き終わり、伊地知が切り上げようとすると、玄関から若い女性が出てきた。
「!?」
それを見た伊地知が息を呑む。
「おばさん、今日もありがとうございました」
「あら、ユキちゃん、こちらこそいつもありがとうね。敦美もきっと喜んでるわ」
敦美の母親の、というよりは、敦美の知り合いという印象だ。
血色が悪いとしか言いようがない青白い顔、目の下にはうっすらと隈があり、手足も肉を削がれたようにやせ細っている。
しかし、伊地知が瞠目したのは、彼女に対してではなく、その背後。
……強力な呪霊が取り憑いていたのだ。
「……失礼ですが、彼女は?」
女性が離れるのを待って、敦美の母親に尋ねる。
「ああ、敦美の中学時代の友人です。高校は別々だったんですけど、中学卒業後もとても仲良くしてもらって……今でも敦美の仏壇を訪ねてくれるんです……ただ、敦美が亡くなってから、どんどんやつれてしまって、心配してるんですよ」
「そうでしたか……」
礼を言ってその場を辞し、車に戻った伊地知は、すぐに2人へ連絡を取った。
「伏黒君、件の呪霊が見つかりました。林 敦美の中学時代の同級生に取り憑いています」
電話を切った伏黒になずなが近寄る。
「……伊地知さんはなんて?」
「呪霊を見つけたらしい。高専に戻って対応策を練るって」