第1章 妖刀事件
呪具・鬼切ーー
先祖代々受け継がれてきた呪霊を斬る太刀。
生まれつき呪力量が高かった兄が継承するはずだった。
それを自分が継承するなんて、思ってもなかった。
手元の鬼切に目を落とすと、家族が惨殺された光景がフラッシュバックする。
あの時ーー私を殺そうとした時の父の顔はよく思い出せない。
でも昔からよく言っていた言葉と笑顔なら鮮明に思い出せた。
ー呪術師は人々を呪霊から守る仕事。
この誇り高い仕事を渡辺家の人間は平安時代から続けているんだー
なずなは弾かれたように立ち上がり、外に飛び出していった。
五条先生は今日のところは帰ると言っていたけれど、まだ間に合うだろうか。間に合ってほしい。
走って走って、息が上がってきた。
地区の外れに見慣れない黒い車が止まっている。
そのすぐ側に目的の人物はいた。
「あの、待ってください!」
ちょうど車に乗り込もうとしていた五条と伏黒が振り返る。
「私、呪術高専に入って、呪術師になりたいです」