第1章 妖刀事件
家族が死んでしまったことは、まだ完全には受け止めきれていない。
でも、身の振り方は考えなければいけなかった。
東京都立呪術高等専門学校ー
父も兄も通っていた呪術師の学校
目の前にいる五条はそこの教師だという。
だったら、答えてくれるだろうか。
「五条先生、私が鬼切の呪力を使い果たせば、鬼切の呪いはなくなりますか?」
自分に刻まれているのは鬼切の呪力を吸収する術式だと言われた。
それを鬼切の呪力が尽きるまで使えば、父を狂わせた呪いも消えると思ったのだ。
「……難しいだろうね。なにせ鬼切に溜まった呪力は1000年ものだ。なずなの一生をかけてもとても使いきれない」
肩を落とすなずなにでも、と五条は続ける。
「鬼切の呪力を使い続ければ、少なくとも呪いを弱めることはできる。今回みたいなことが起こらないレベルにはできると思うよ」
そこを踏まえて考えてみてね、
返事は今すぐでなくとも構わないから。
「呪術高専の入学、辞退するんじゃないてすか?」
鬼切の世代交代の呪いで父親が乱心して家族は皆殺し。
しかもなずなが鬼切を継承していれば、起こらなかった事態だ。
伏黒の脳裏に自分のせいだと泣いていたなずなの顔が浮かぶ。
「うーん、それはどうだろうね?」
隣にいる五条は飄々と笑っている。
五条も伏黒も次の任務が控えている。
呪術師はこの時期、特に人手不足なのだ。
なずなの返事は、彼女の家族の葬式を上げた後で聞くことになるだろう。
今日のところは帰るかと車の手配をした。