第8章 同罪
その日のうちになずなが昨日助けた女性、大内 秀子と都内の喫茶店で会うことになった。
伊地知、伏黒とほとんど包帯の取れたなずなも同席する。
呼ばれた大内 秀子が少し落ち着かない様子で向かい合わせで席に着くと、早速伊地知が切り出した。
「急にお呼びだてして申し訳ありません。昨日の梔子駅での事故について、お伺いしてもよろしいでしょうか」
「……よく覚えていないんです。気がついたら病院にいて……」
それもそのはず、彼女は線路に落ちる直前から意識を失っている。
「事故の前に何か前兆のようなものや、なぜあの場で気を失ったのか、心当たりはありませんか?」
「……心当たり、というか……あの駅、自殺が連続しているのは知ってますか?」
3人がうなずくと、秀子は目を伏せて話し出した。
「……去年の9月に林 敦美さんって人が自殺しているんですけど、それから駅で次々と自殺があって……警察は事件性はないって言ってますけど、林 敦美さんの復讐なんじゃないかって、当時のクラスメイトの間で噂になってたんです」
「林 敦美さんはなぜ自殺したのですか?」
「………………分かりません」
伊地知の問いかけにそう答えた彼女に伏黒は引っかかりを覚えた。
長い沈黙もそうだが、さっき彼女自身が言った「林 敦美の復讐」とは?
復讐と断言するなら、その原因も知っているはずだ。
「復讐って何の復讐なんですか?」
「……」
伏黒の追及に秀子は押し黙ってしまう。
そこで伊地知がすかさずフォローした。
「この場の証言であなたが不利益を被ることはありません。今は少しでも手がかりになる情報が欲しいんです。協力していただけませんか」
「……いじめです」
そう言って、彼女は梔子駅での最初の自殺者、林 敦美の生前について話し始めた。