第8章 同罪
「……渡辺の術式は鬼切の呪力を使う身体強化だったか」
「はい、そうですけど……?」
なずなは肯定しながらも首を傾げている。
ふむ、と家入は顎に手を当てる。
身体強化の一環で身体の損傷を治した、と考えるべきか。
そこに鬼切を取りに一旦警察署に行った伊地知が戻ってきた。
「渡辺さん、鬼切が戻ってきましたよ!」
「ありがとうございます、伊地知さん」
当然ではあるが、鬼切には傷ひとつ付いていなかった。
さすが平安時代からの呪具は伊達ではない。
なずなが伊地知から鬼切を受け取るのを見た家入が「ちょうどいい」と声を上げた。
「少し包帯を外してみよう」
なずなの身体強化術式は、術式範囲が自身の身体のみと非常に狭い代わりに、鬼切を持つだけでフルオート発動する特性がある。
鬼切を持った状態で今の傷が治れば、反転術式の証明ができるはずだ。
試しに頭の包帯を外してみる。
さて、どうなるか……
「おお……」
「えっ、どうなってるんですか?」
なんとも言えない伊地知のリアクションに自分では傷が見えないなずなは戸惑っている。
「治ってきているよ。なんだ、反転術式も使えるじゃないか」
頭の傷はゆっくりだが確実に塞がっていた。
鬼切を持って安静にすれば、今日中にすべての怪我が治るだろう。
これで血痕の割に軽傷だった謎が解けた。
「……縫合された傷はあるか?あるんだったら完全に塞がる前に抜糸するぞ」
「えっと、確か左腕と左肩と……」
「さぁ、男どもは出てった出てった」
伊地知と伏黒は医務室から追い出され、なずなの処置が始まった。