第8章 同罪
緊張が解けないまま、なずなの事情聴取が始まる。
「渡辺 なずなさんだね?高校1年生?」
「は、はい」
「学校は順調?学業が心配とか、嫌なことはない?」
「はい、特には……学校は順調です。同級生も先輩も優しいですし」
そう言って無意識のうちに、ちらりと伏黒を見る。
「じゃあ、どうして線路に飛び込んだの?悩み事があったの?」
「あ、あの、自分で飛び込んだんじゃなくて、後ろから押されて落ちてしまったというか……」
・
・
・
「はぁぁぁー……緊張した……」
ようやく聴取が終わり、あれほど心配していた銃刀法のことには触れられずに、無事なずなは解放された。
「お疲れさん」
伏黒から労いの言葉とともにポトリとなずなの手に何かが落とされた。
『たっぷりレーズンの贅沢ソフトクッキー』
先ほどコンビニでなずなが見ていたクッキーだ。
「えっ、いいの……?」
「すげー見てたから欲しいのかと思って。それに今日は散々だったろ」
言われてみれば朝から電車に撥ねられ、警官から自殺未遂を疑われ、慣れない事情聴取を受け……
まだお昼にもなっていないのに、踏んだり蹴ったりだ。
でもそんなことはどうでもよくなるくらい、その気遣いが嬉しかった。
はにかみながらソフトクッキーを受け取る。
「えへへ、ありがとう!」
そしておもむろにそれを半分に割って、片割れを伏黒に渡す。
「?……全部食っていいぞ」
「せっかくだから伏黒くんも食べてみてよ。2人で食べた方がきっとおいしいよ」