第8章 同罪
「……本当に大丈夫なんだな?」
「うん、こんな包帯だらけだけど軽傷だから、今日退院していいんだって」
心配かけてごめんねと困り顔で笑うなずなにひと安心した伏黒は、今度はベッドの足元にある黒いビニール袋に目が留まった。
口が縛ってあり、中身は確認できない。
「これ何だ?」
「今日着てた制服。すごいことになっちゃってるから、捨てますかって聞かれたんだけど、呪いの手がかりがあるかもしれないから、持ち帰らせてもらうことにしたの」
「……やっぱり呪霊が?」
「鬼切が反応したからそうだと思う……でも見つからなかったんだよね」
なずなは怪訝そうな顔だが、隠れることに特化した呪霊ならそういうこともあり得る。
ただ、そうなると呪霊をあぶり出すための策を考えなくてはいけない。
なずなの怪我を治すためにも一度高専へ戻るべきだろう。
「あ、そうだ。病院のコンビニでサンダル買ってきてもいい?靴、なくなっちゃって……」
いくら伊地知が車で送ってくれるとはいえ、さすがにスリッパで外を歩くのには抵抗がある。
伏黒は自分が買ってこようかと提案したが、病院のコンビニに入ったことがないなずなは、一度行ってみたいらしい。
なずなはいそいそと黒いビニール袋の口を開けている。
「それ、ここで開けて大丈夫か?」
この4人部屋の病室でベッドを使っているのはなずなだけだが、血塗れになった制服を出すのは衛生的に良くない。
それに少し嫌な予感がする。
「……わっ!?」
案の定、スカートのポケットから取り出した財布はボロボロで至る所に血痕がついてしまっていた。
これをコンビニのレジで出すのは憚られる。
かといって、現金を握りしめて買い物に行くのも少し危ない気がする。
「……伏黒くん、お金貸してください……」