第8章 同罪
なずなを乗せた救急車が走り出すと、伏黒はすぐに駅の外にいる伊地知に連絡した。
「伊地知さん、渡辺が電車に撥ねられて病院に運ばれました」
『渡辺さんが?だ、大丈夫なんですかっ!?』
「大怪我ですけど、運ばれた時は意識もありましたし、会話もできました」
『……ここからならおそらく英集会総合病院でしょう。伏黒君もすぐ戻ってきてください』
伊地知の言葉に二つ返事して駅を出る。
駅員に預けられた鬼切も気になるが、今はなずなの方が優先だ。
駅のロータリーにはすでに伊地知が車のエンジンをかけて待っていた。
伏黒も急いで乗り込む。
「まず英集会総合病院に向かい、そこで伏黒君を降ろします」
「伊地知さんは?」
「私は警察署へ。おそらく鬼切は一旦警察に押収されますから、それを取りにいくのと、事情を説明しに行ってきます」
英集会総合病院にはすぐ到着した。
伏黒が降りると、伊地知から声をかけられる。
「渡辺さんの事情聴取で病院にも警官が来ると思います。ひとりでは心細いでしょうから、渡辺さんについていてあげてください」
その言葉にうなずき、走り出す伊地知の車を見送った。
病院の受付でなずなの名前を伝えると、少し待ってから病室を教えられる。
向かった病室では包帯だらけになったなずながベッドに腰掛けていた。
「あ、伏黒くん!」
「怪我の具合はどうだ?」
なずなの姿を見た伏黒は思わず唇を噛む。
頭から足の先まで、包帯がない箇所の方が少ない。
でも声は明るいし、寝込んでないところを見ると、思ったより元気そうではあった。
「大丈夫。骨もどこも折れてないし、外科の先生もびっくりなくらい軽傷だったみたい」
実は救急車で運ばれている最中にも救急隊員に驚かれたのだ。
本当にこれだけしか負傷していないのか、他に痛むところはないかとしつこく尋ねられた。
そして後から看護師に聞いた話だが、電車に撥ねられたあの状況で意識もしっかりして、会話までできる状態だったのは奇跡だったらしい。