第8章 同罪
「だ、大丈夫ですか?」
助けた女性に声をかけるが、気を失っている。
呼吸は正常だし、めぼしい怪我もない。
……なんで、線路に落ちたんだろう?
最初にいたホームから人ごみをかき分けて伏黒もなずなの所へ駆けつけた。
「渡辺、無事か!?」
「うん、でもこの人が気絶しちゃってて、怪我はしてないと思うんだけど……」
すぐに駅員も来て、気絶している女性の容態を確認し、なんらかの発作や線路に落ちた時に頭を打った可能性もあることから、女性を救急搬送することになった。
しばらくすると救急車と一緒にパトカーも到着し、女性は搬送、伏黒となずなはその場で事情聴取を受ける。
「被害者の女性の方とは知り合いですか?」
「えっと、全然知らない方です」
「事故前の様子は?女性が自分から飛び込んだとか、誰かと揉めていたとかはなかった?」
「え、えーっと……」
矢継ぎ早の質問になずなが答えに詰まっていると、代わりに伏黒が返答した。
「特に不審な動きはしてませんでした。自ら飛び込んだというより、意識を失ってホームから落ちたように見えました」
その後の聴取にも伏黒は冷静に答え、なずなは目を丸くしてその落ち着いた様子を見ていた。
慌ただしく人がホームを行き交う中、安全確認を終えた電車はまもなく動き出す。
それを見送りながら、伏黒がポツリと呟いた。
「いきなり飛び出すから焦ったぞ」
「ご、ごめん、体が勝手に動いちゃって……」
もう少し遅かったら、もろとも電車に轢かれていたかもしれなかったのだ。
判断が早いのは良いことなのだが、彼女の思い切りの良すぎる所に伏黒は少し心配になる。
その後も2人はしばらく駅の様子を見ていたが、呪いの気配は微塵もなかった。