第33章 断章 全身全霊チョコレート・パニック!
「へぇ、いいじゃん、作るのもそんな難しくなさそうだし」
「ダークチョコレートとホワイトチョコレートで玉犬の黒と白を作って、チョコペンで顔を描こうと思うんだ」
「それなら型があればできそうだよな。あとは湯煎の鍋と……」
その時、教室の扉が勢いよく開き、野薔薇が足早に入ってきた。
「話は聞かせてもらったわよ」
「野薔薇ちゃん!」
「私に隠れてそんな面白そうなことするなんて許さないから」
「べ、別に隠れようとは思ってないんだけど……」
「それで?伏黒にはどういうのを渡すの?どうやって渡すかも重要よね」
「えっと、こういう形の玉犬チョコを作ろうと思ってて……」
「ラッピングは?」
「へ?」
「手作りチョコを用意するならラッピングも自分でやんなきゃならないでしょ?」
「!」
なずなは目を見開いて固まってしまう。
今回はお店で包んでもらうのとは訳が違う。
確かに野薔薇の言う通り、自分でラッピングまでしなければならない。
でも凝ったラッピング技術など持ち合わせていない。
ど、ど、どうしよう……!?
サーッと青ざめていくなずなに野薔薇は助け舟を出す。
「じゃあ今度いろいろ見に行くわよ」
それまでに包装の色とデザイン考えときなさいと雑誌のラッピング特集ページを指差した。
ど、どういう包装がいいかな?
恵くんは派手なのはきっと好きじゃないよね、
でも、あんまり質素にし過ぎて手抜きって思われるのも嫌だな……
色は玉犬に合わせて黒と白にして……あ、でもシックな感じだと中身と合わなくなっちゃうかな。
うーんと悩み始めると、またも教室の扉が開く。
「オマエら、何してんだ?」
任務を終えた伏黒が教室に入ってくるなり、なずなは机に広げていた雑誌を引っ込めた。
「な、なんでもないよっ!?」
「?」
慌てて言い繕うなずなを微笑ましい目で眺める虎杖と野薔薇。
この時の2人はまだ知らない。
玉犬チョコに全力投球するあまり、彼女が暴走してしまうことを―……