第33章 断章 全身全霊チョコレート・パニック!
雑誌には今をときめくショコラティエの作品やバレンタインのチョコレートを扱う店などが取り上げられており、表紙にあった動物チョコは店で売っているもののようだ。
だが、なずなは動物チョコそのものが欲しいのではなく、こういう形のチョコを作りたいという思いなので、そんなところは読み飛ばし、手作りチョコレートの特集ページをめくる。
形や飾りつけは様々だが、どれも砕いた板チョコを溶かして成形するという手順は同じ。
なずなが考えているものなら飾りつけもチョコペンがあればできそうだ。
頭の中でイメージを膨らませ、きっと自分にもできると言い聞かせて即行動、まずは頼れる同級生に相談しに行った。
「うーん、でも俺、お菓子ってあんま作ったことないんだよなぁ」
「!」
衝撃の返答になずなは言葉を失う。
料理があれだけ上手な虎杖ならお菓子も作れて当たり前だと思っていた。
でも幼い頃から祖父と2人暮らしだったことを考えると、確かにお菓子を手作りする機会はあまりなかったかもしれない。
そこまで頭が回らなかった。
「そ、そっか……ごめんね、変なこと聞いちゃって……」
どうしよう?
他に頼れる人にあてがない……!
しゅんと項垂れ、教室を出ようとするなずなを見て虎杖が慌てて制止する。
「待って待って、多分作り方見れば大体分かるから。教えられるレベルにはならないかもしんねーけど、そんな落ち込まないで?」
虎杖に促され、なずなは昨夜買った雑誌を見せた。
「今度のバレンタインにね、こういう動物チョコみたいな形の玉犬チョコを作れないかなって」