第32章 断章 節分カルチャーショック
「ってなわけで、当てられるもんなら当ててみな!1つでも当てられたら撃退されてあげる」
無論大人気なく術式を使い、投げられた落花生も大豆も無限に阻まれて届かない。
背後に回ろうが、頭上から仕掛けようが全く効かない全方位完全防御だ。
「当たる訳ないじゃない!」
「先生、狡ぃぞ!」
野薔薇と虎杖が口々に抗議していると五条の横から白刃が迫った。
鬼の面を狙った一撃を易々と躱したものの、1人だけ空気感が違うことに小首を傾げる。
「……ねぇ、なずなだけレベル違くない?なんでこんなに殺気立ってるの?」
「鬼は斬らないといけないですから」
「コワイね〜、スイッチ入っちゃった?さすが渡辺綱の子孫、遺伝子に組み込まれてるって感じ」
結局なずなの刀も悉く避けられ、床に散らばっていく豆のせいで足場だけどんどん悪くなっていく。
ちなみに五条は足元にも無下限呪術を発動しており、落ちた豆を踏まないので、4人は一方的に足場の影響を受けている状況だ。
「あーっ、もういっそ鰯の頭投げる?」
これじゃあ埒が開かないと野薔薇が毒づく。
「そっか、臭いなら無限貫通する!」
「やめろ、後の掃除が地獄になる」
「そんなの届く前に跡形もなく潰すに決まってるでしょ。臭いもん」
そう言って手近にあった落花生を極小の蒼で消し潰してみせた。
五条が飽きるまで続くかと思われた攻防だったが意外にも早く、その上唐突に終わりが訪れる。
「あ、もう時間だ」
「何かあんの?」
「ちょーっと外せない用があってね」