第32章 断章 節分カルチャーショック
虎杖と野薔薇の手には殻付きの落花生、伏黒は大豆を持っている。
早速伏黒の持っているものに目を付けた野薔薇が口を尖らせた。
「何その豆、節分といえばピーナッツでしょ」
「それ東北地方とか北海道の話だろ。関東は大豆だ」
「あ、そうなの?だからこっちじゃあんまりピーナッツ売ってなかったんだ」
スーパーの節分コーナーに無くて探したんだよなと頭を掻く虎杖になずなが尋ねる。
「ピーナッツと大豆をどうするの?」
「鬼は外、福は内って言って投げんの」
「鬼にぶつけたりするわよね」
野薔薇の言葉に虎杖がうんうんと頷いた。
伏黒も特に何を言うこともなく、3人にとっては共通認識のようだが、やっぱりなずなには分からない。
「どうして鬼にぶつけるの?」
「それで鬼を撃退すんのよ」
「???」
答えてもらっているはずなのに、なずなの頭の上には更にたくさんの疑問符が浮かぶ。
落花生や大豆と鬼がどうしても結びつかないのだ。
「そ、そんなので鬼を撃退できるの?それにもし撃退できるとしても鬼は逃がしちゃダメだよ、斬らないと」
「……渡辺、それは殺意高すぎ」
その後、どうやら渡辺家は渡辺綱が鬼を切った伝承から何もせずとも鬼が逃げ出すということで、節分の豆まきをしない一族だと判明した。(伏黒調べ)
「へぇ〜、じゃあ豆まきしたことないんだ?」
「うん」
「じゃあヒイラギに鰯の頭刺して玄関先に飾ったりもしなかった?」
「そ、そんなのもあるの?それも鬼を撃退するため?」
そうなんじゃねーかなと曖昧に返す虎杖に代わって伏黒が答える。
「柊鰯って魔除けだ。昔は臭いものとか尖ったものを厄払いに使ってて、鰯とヒイラギは鬼が嫌うものらしい」
ヒイラギの枝に鰯の頭が刺さっているところを想像してなずなは顔を引きつらせた。
それがそれぞれの家の玄関先に飾ってあるなんてなんとも猟奇的な光景に思える。
「よく猫に盗られるのよね、あれ」
「そうなんだよな〜、いつの間にか下に落っこちてて鰯がなくなってる」
「そ、そうなんだ……!」
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