第8章 同罪
「アアァ、ナァイ、ナァイ……」
「イキタクナイヨォ、ォォ」
なずながホームに続く階段を下りると、壁に、線路に、ベンチの上に呪霊が居座っていた。
3体の呪霊を視界に捉えて走り出す。
ベンチと壁にいた呪霊を一息で切り伏せ、身を翻して線路に降り、その先にいる呪霊も一撃で祓う。
どれも心配したほど強い呪霊ではない。
反対側のホームを見ると伏黒も呪霊を祓い終わっていた。
なずなは隠れた呪霊がいないか周りを確認しつつ、線路伝いに伏黒のいるホームに向かう。
「怪我はないか?」
「うん、大丈夫。呪霊、全部祓ったってことでいいんだよね……?」
「ああ……ただ、伊地知さんが言ってたより、だいぶ弱いのが気になる」
駅にいた呪霊は合わせて5体。
なずなが祓った3体は四級。
伏黒が祓った一番強いものでも少し強めの三級呪霊といった印象だった。
窓が残穢を確認したと言っていたが、どの呪霊も呪術を使えるようなレベルではなかったのだ。
もっと強い呪霊が隠れているのか、そもそもこの駅にはいないのか。
どのみち、玉犬が見つけられないとなると、こちらは打つ手がない。
「一旦、伊地知さんのところに戻る?」
「そうだな。これ以上できることはなさそうだし」
疑問は残るが、とりあえず2人は駅を出て、伊地知の車に戻った。