第8章 同罪
「事故現場は瀬野先線の梔子駅。昨日18:02頃、被害者の女性がホームから線路へ飛び込み、快速列車に撥ねられました」
梔子駅に向かう車の中で、伏黒となずなは伊地知から説明を受ける。
伏黒の手元のタブレット端末には被害者の身元の詳細が表示されている。都内の大学へ通う女子大生だったようだ。
「……自殺ですか?」
「ええ、同じホームにいた目撃者の証言から自殺でほぼ間違いありません。ただ、梔子駅では昨年9月以降、今回も含めて8件の人身事故が発生しています」
2ヶ月に1件以上のペース、さすがに異常だ。
「事件性が疑われたのですが、どの事故も目撃者の証言から被害者の自殺だと結論づけられました」
であれば、呪いの線が濃厚。
もし呪いの影響でなくとも、これだけハイペースで自殺者が出ているのなら、この駅の利用者の恐怖心から呪いが発生していてもおかしくはない。
「今回、伏黒君と渡辺さんにお願いしたいのは、梔子駅の呪霊の討伐です。事前の窓の調査で残穢は確認されています。8件とも同じ呪いが原因と仮定した場合、準二級〜二級相当と思われます」
梔子駅は郊外の小規模な駅だ。
近くに高校があるため、学生の利用者が多い。
これまでの自殺者もその高校出身者がほとんどだ。
そして、ある学年に固まっていた。
梔子駅に到着する頃には終電も終わり、駅構内は閑散としている。
しかし、伏黒もなずなも眉を寄せた。
「呪いの気配、するね」
「ああ」
それを裏付けるように鬼切も脈動している。
伏黒も玉犬を呼び出した。
「終電は終わっているので、一般の方が来ることはまずないと思いますが、住宅地も近いので、駅周辺に帳を下ろします」
改札口を通って奥へ進む2人を見送り、伊地知は帷を下ろした。
この駅は上り線と下り線の線路を挟んで2つホームがある。
玉犬が上り線ホームに向かってひとつ吠えた。そちらの方が呪いが強いということを意味だ。
「渡辺、それぞれ分かれて別々のホームを確認するぞ。下り線の方を頼む」
伏黒の言葉になずなはうなずく。