第31章 断章 Happy Merry Birthday
「五条先生の家なら、舟盛りの器があるかなって……」
“舟盛り”と聞いて伏黒はあることを思い出す。
そういえば、入学した日の自己紹介で刺身が得意料理って言ってたか……
だがそれで五条先生を頼るというのはなんとなく釈然としない。
「刺身以外で」
「え、うーんと……じゃあ虎杖くんにちょっと教わってくる!」
「待て待て!なんで虎杖が出てくる?」
「だ、だって、恵くんにおいしいものを食べてもらいたいから……」
いじらしくて可愛くて、顔が緩みそうになるのを咳払いで誤魔化す。
他の男を頼るのにいい気はしないものの、こちらも手料理が食べたいと言った手前、取り下げるのはあまりに身勝手過ぎるし、せっかく頑張ろうしてくれているのだからなずなの自由にさせたい気持ちもある。
悩みながら脳内で熟考を重ねた結果、伏黒はなずなに任せることにして「楽しみにしてる」と返した。
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