第31章 断章 Happy Merry Birthday
伏黒は少し考えた末に呟くように答えた。
「……なずなの手料理、とか」
「手料理?えっと、手作りなら何でもいいの?」
伏黒が頷くとなずなは数度目を瞬かせ、ぐるぐると考え始める。
私が作れるものでお祝い向けの料理……
カレーはお祝いって感じじゃないし、ステーキは焼き加減が分からないし、かといってフルコースなんて作れないし……
和食も凝った料理は無理だし、もっとハードルが低そうな……丼もの?
丼ものだったら、やっぱりうなぎ?
ダメだ、きっと上手く焼けないし、タレも作れない……!
他に思いつくのは炒飯やらトンカツやら鮭の塩焼きやら、考えれば考えるほどいつも食べている料理が出てくる。
なお、ケーキを手作りする選択肢はすっかり抜け落ちている模様だ。
お祝い……
うーん、お祝い……おめでたい料理……
……ハッ!
舟盛り!!
これなら焼き加減うんぬんを心配しなくてもいいし、何よりおめでたい!
ピーンと閃いたなずなは善は急げとばかりに早速必要なものの準備に取り掛かろうとする。
「……じゃあ、ちょっと五条先生の所に行ってくる!」
「待て、なんで五条先生?」
難しい顔から一転、何か閃いた表情になったと思ったら、今度は予想外の発言。
割と思い立ったら一直線なところがあることは前々から感じていたが、手料理から何故担任の名が出てきたのか理解できず、伏黒は思わず聞き返した。